2023年4月に基本情報技術者試験の出題傾向ががらりと変わりました。
特に、旧試験と新制度の「午後問題(科目B)」はまったく別モノと言えるほど内容が変化しています。
それにより、勉強方法で頭を悩ませている方や科目Bを突破できずに何度も試験にチャレンジしている方など、基本情報技術者試験対策で苦労されている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は
基本情報技術者試験の新制度合格者が考える
科目A・科目Bの勉強方法
をお伝えします。
僕は新制度に変わってから基本情報に合格できたのですが、実は旧試験の受験経験もあります(つまり1回は落ちたということ……)
新旧両方の経験も踏まえておすすめの勉強方法や教材をご紹介できればと思います。
- 基本情報技術者試験の概要
- 旧試験と新制度の違い
- 科目Aと科目Bの効果的な対策方法やおすすめの参考書
基本情報技術者試験ってどんな資格?
まずは簡単に、基本情報技術者試験がどのような資格なのかについてお伝えします。
試験の概要・対象者
基本情報技術者試験は、ITに関わる方たちが共通して理解しておくべき基本知識を体系的に学ぶことが可能な資格です。
したがって、想定される対象者は以下の通りです。
- IT関連の業種に従事している方
- これからIT業界で勤めたいと考えている方
個人的には、「ITの基本知識を体系的に学んでみたい!」と考えている方にもおすすめできる資格だと思っています!
2023年4月に「新制度」として大幅な変更が実施
【その①】CBT方式・通年化への変更
基本情報技術者試験の旧試験では春と秋の年2回しか実施されませんでした。
「落ちたらまた半年後……」というプレッシャーを感じながら受験したのが懐かしいです(※1回落ちました)
しかし、2023年4月からはCBT方式・通年化へと変更になり、受験できるチャンスが一気に増えました。
CBT方式では、コンピュータを使用して試験が実施されます。
一般的な資格試験は「決められた日時に受験者が会場へ集まって『よーいドン』」で試験がスタートします。
しかし、CBT方式では、1年を通して、試験日程や会場を受験生が自身の都合に合わせて選択できるため、受験へのハードルが旧試験と比較して大きく下がるというメリットがあります。
試験日程を自分の都合に合わせて選べるので、旧試験ではありがちだった「数カ月前に一応申し込みはしたけど都合が悪くなって受験できなくなった!」という事態が発生しづらくなりました!
【その②】出題傾向の変更
新制度になったことで、出題傾向と受験時間が大きく変わりました。
特に、「午後問題」の変わりようはすさまじく、内容としては以下のとおり、まったくの別モノです。
旧午後試験 | 科目B | |
---|---|---|
試験時間 | 150分 | 100分 |
解答形式 | 11個の大問から5問を解答 (うち2問が自由選択) | 20問の小問を全答 ■ 内訳 アルゴリズムとプログラミング 情報セキュリティ |
解答範囲 | ・情報セキュリティ ・データ構造とアルゴリズム ・ソフトウェア開発 など | ・アルゴリズムとプログラミング:16問 ・情報セキュリティ:4問 |
合格基準 | 60% | 60% |
この変更によって「簡単になった」と感じる方と、逆に「難しくなった」と感じる方とで、難易度が二極化したのではないかと思います。
科目A・科目Bの概要を理解する
新制度である科目A・科目Bの概要は以下の通りです。
科目A | 科目B | |
---|---|---|
試験時間 | 90分 | 100分 |
出題数(※全問必須解答) | 60問 | 20問 |
形式 | 四肢択一式(一問一答) | 多肢択一の長文読解式 |
出題範囲 | ・テクノロジ系 ・ストラテジ系 ・マネジメント系 | ・アルゴリズムとプログラミング(擬似言語による出題)【計16問】 ・情報セキュリティ【計4問】 |
基本情報技術者試験を取得するメリット
このように2023年4月に大きく変わった基本情報技術者試験ですが、この資格を取得することにどのようなメリットがあるのでしょうか?
主なメリットとして以下のようなものが挙げられます!
- 未経験でIT企業に就職しやすくなる
- 給与、賞与に反映される(※会社によります)
- IT技術の基本知識を広く浅く学べる
また、以下のような割合で、資格を取得しているかどうかを採用時の参考にしているIT企業があるとのことです。
基本情報技術者試験 …… 47%
応用情報技術者試験 …… 35%
出典:令和3年みずほ情報総研株式会社の調査報告書:22ページ
上記を踏まえると、これから未経験でIT業界へ参入したいという方にとって、特に大きなメリットを持つ資格と言えるのではないでしょうか。
合格した当時の筆者のスペック
新制度の基本情報技術者試験に合格したときの僕のスペックはおおよそ以下の通りです。
- 旧試験受験 → 午後は8割ぐらい、逆に午前が正解数1問不足で「不合格」
- プログラミング経験あり ※完全独学(PHPで簡単なWebアプリが作成できる程度)
- IT技術書を何冊も読んだ経験があり、知識が浅く広く身に付いている状態
- 非IT企業でExcelやスプレッドシートで関数やちょっとしたマクロを組んだりしていた
ざっくり言うと「未経験<筆者<実務経験者」ぐらいのレベル感でした。
独学とはいえ、プログラミング経験があったことが非常に大きかったと感じています。
「科目B」の対策は、IPAで公開されているサンプル問題を2周と、セキュリティ情報の知識を強化したことぐらいでした。
※セキュリティ情報の知識強化には情報セキュリティマネジメントの「過去問道場」を利用しました。
必要な勉強時間の目安
旧試験のときは、完全未経験者で200時間ほどの勉強時間が必要だと言われていました。
しかし、新制度に変わったことで、必要な勉強時間の目安はかなり個人差がある、というのが個人的な考えです。
具体的には「科目Bに必要な勉強時間の目安に個人差がある」と思っています。
前置きが長くなってしまいましたが、以下より新制度合格者が考えるおすすめの試験対策をご紹介していきます。
おすすめの試験対策【科目A】
科目Aは広い出題範囲の中から「60問」が出題される一問一答形式の試験です。
主な試験対策の流れは以下の通りです。
- テキスト教材で出題範囲全体の知識をインプットする
- 過去問道場で10年分の過去問を繰りかえし解く(目安:正答率が8割以上で安定するまで)
ここでポイントが3つあります!
- テキスト教材を読むのは、どんなに多くても2周までとする
- 過去問道場で過去問を解くときは、「年度別」ではなく、「ジャンル別」で解く
- 勉強時期と受験日との間が空きすぎると確実に忘れるため、できれば短期集中的に勉強する
【ポイント①】テキストは「2週まで」
知識ゼロの状態で過去問を解いても効果が薄いため、まずはテキスト教材でインプットをします。
しかし、インプットばかりに時間をかけるのも非効率なため、テキストを周回するとしても「2週まで」とすることをおすすめします。
最終的に知識が定着していくのはアウトプットしていくときなので、テキストを読むときは雰囲気を掴む程度でOKです。
【ポイント②】過去問は「ジャンル別」に解く
過去問道場で過去問を解くときは「年度別」ではなく、「ジャンル別」に解くようにすると効率的です。
そうすることでジャンルごとの過去問周回ペースが早くなり、ひとジャンルずつ確実に正答率を高めていくことが可能です。
逆に「年度別」で解くと、前回間違えた問題を再度解くまでに時間が空いてしまい、「前回間違えたことする忘れてしまう=復習にならない」状態になる確率が高まります。
また、全体的にジャンルを潰せてきたと感じたら、今度は総仕上げとして「年度別」に過去問を解きます。
そこでも間違えてしまう問題については、再度テキスト教材で復習しましょう。
僕は実際にジャンル別で過去問を解いていきましたが、着実に知識が身につく手ごたえがあって、勉強が純粋に楽しくなっていました!
【ポイント③】科目Aの勉強は短期集中で取り組む
科目Aあるあるなのですが、勉強に取り組むのが早すぎて「以前は覚えていたことを忘れてしまう」ということが起こり得ます。
これは科目Aの出題範囲が広すぎるがために起こる現象です。
本当に出題範囲が広すぎて、基本情報技術者試験の分厚いテキストですら細かい部分はカバーしきれていません。
そのため、過去問を解くときに「え、なにそれ初見ですが……」という用語にちょこちょこ出くわします。
※そういう知識は過去問を解く中で覚えていきましょう。
そのため、科目Aの勉強は可能な限り短期集中で取り組み、前倒しで勉強するとしても、こまめに過去問を解くなどして、復習するタイミングを必ず設けましょう。
以上が科目Aのおすすめの試験対策でした!
おすすめの試験対策【科目B】
科目Bは、「アルゴリズムとプログラミング:16問」、「情報セキュリティの読解問題:4問」で構成されている全20問の試験です。
科目Bは大きく2つの分野(プログラミングと情報セキュリティ)で構成されているため、それぞれの試験対策についてお伝えします!
【対策その①】アルゴリズムとプログラミング
※上記いずれかのリンクをクリックすると該当する節へ移動します。
また、科目Bの「アルゴリズムとプログラミング」を突破するのに必要な知識・スキルは以下の通りです。
突破するのに必要な知識・スキル 科目B「アルゴリズムとプログラミング」を
- 長文読解力
- if文やfor文、配列といったプログラミング独自の概念への理解
- 論的思考力
これらを踏まえて、以下よりそれぞれのレベル感の方に適していると考える試験対策をご紹介していきます!
パターン①|プログラミング「完全未経験」の場合
率直に申し上げて、この中でもっとも対策が大変なのが、この「①プログラミングは完全未経験」の方です。
プログラミングの経験や知識がまったく無いとなると、まずは「プログラミングの基本文法や考え方」を知る必要があります。
その理由は、科目Bのアルゴリズム問題では、疑似言語という基本情報技術試験独自の言語で記述されたソースコードを読み解き、解答していく必要があるためです。
疑似言語という実際のプログラミングでは使用されない言語ではあるものの、考え方はプログラミングそのものです。
そのため、これまでにまったくプログラミング経験が無い場合、まずはその穴を埋めていく必要があります。
以下が、完全未経験の方におすすめの試験対策(流れ)です。
- テキスト教材でトレースを習得する
- 実際の問題(IPAのサンプル問題ではなく、参考書の問題が望ましい)を見ながら「これがどういった処理なのか?」を言語化する練習をする
- 参考書でひたすら実践練習を繰り返す
- ここぞというタイミングでIPAのサンプル問題に挑戦する
トレースとは、プログラムの処理の流れを書き出しながら追跡することです。
トレースを行うことで、その処理の流れを正確に追うことができ、問題を正しく理解することにつながります。
多くのブログ記事でも言われていることですが、科目Bのアルゴリズム問題では、トレースを習得することが欠かせません。
処理を追うことができなければ、そもそもそのコードの意味を理解すること自体が難しくなるためです。
したがって、完全未経験の方は、まずはテキスト教材を用いてトレースに慣れるようにしましょう。
ただし、僕の経験から言わせていただくと、ただトレースができるようになるだけでは不十分な場合があります。
その理由は、トレースだけできるようになっても「木を見て森を見ず」の状態になってしまう可能性があるためです。
トレースできた! ……けど、結局どういうこと……?
と、問題の解答ができずに行き詰まってしまっては意味がありません。
そして、この第2ステップまで到達できたら、あとは参考書でひたすら実践練習に取り組みましょう。
また、科目Bには過去問が無いため、IPAで公開されているサンプル問題は非常に貴重な本番対策問題です。
自分自身で模擬試験を行うときなど、ここぞというときのために温存しておくことをおすすめします。
パターン②|プログラミング経験がある場合
プログラミング経験がある場合、科目Bのアルゴリズム問題に対してはそれほど身構える必要はありません。
ただし、一言に「プログラミング経験」と言っても、その中身は様々かと思います。
アルゴリズム力(論理的思考力)に自信の無いという方は、以下のいずれかでトレーニングしてみることをおすすめします。
- 参考書でひたすら問題を解く
- 基本情報技術者試験ではなく、実際のプログラミング言語でアルゴリズム問題に挑戦する
特に、後者の「実際のプログラミング言語でアルゴリズム問題に挑戦する」というのは、プログラミング経験があるからこそ取り組みやすい対策方法です。
最終的には参考書やIPAのサンプル問題で実践練習をした方が安心ですが、アルゴリズム力を鍛えるという意味では必ずしも基本情報技術者試験用の教材でなくても問題はありません。
例えばpaizaのようなWebサービスを利用すれば、無料枠でアルゴリズムのトレーニングができます。
また、アルゴリズム力には自信はあるものの何故か合格できないということであれば、もしかすると必要な読解力が不足している可能性も考えられます。
その場合は、基本情報技術者試験に特化した参考書でしっかり対策することをおすすめします。
【対策その②】情報セキュリティの読解問題
情報セキュリティの問題を正答するポイントは、「情報セキュリティの知識量」と「長文読解力」です。
そして、これら2つを磨くのにおすすめの対策が、情報セキュリティマネジメント「旧試験」の午後問題を解くことです。
- 科目Aを学習する中でセキュリティの基礎知識をしっかり身につける
- 過去問道場(情報セキュリティマネジメント)で「旧試験」の過去問題を周回する
科目Bの情報セキュリティについては、上記の流れ(特に②)を徹底すれば、十分に4問全問正解が狙えます。
欲を言えば、基本情報合格を確実にする意味でも、情報セキュリティの4問は全問正解していきたいところです。
「たった4問だし……」と軽視せず、むしろこの4問を大事に回収していくことで合格に近づくことができます。
おすすめの参考書
おすすめの対策方法が分かったところで、続いておすすめの参考書をご紹介します。
科目A対策
キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者
基本情報技術者試験の範囲は非常に広く、また特に初学者の方にとっては分かりづらい内容も多く含まれています。
そのため、科目Aのインプット用に選ぶ書籍は、できる限り分かりやすい(イメージが掴みやすい)ものである方が効果的です。
今回おすすめする『キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者 (情報処理技術者試験)』は、豊富な図解とかわいらしいイラストで、ITの難しいお話もわかりやすく解説しています。
初めて基本情報技術者試験に挑戦する方へおすすめできる1冊です。
僕も初めて基本情報技術者試験を受験するときの対策本としてこの1冊を選びました!
イラストが可愛く、難しい内容でも馴染みやすい点が気に入っています。
キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者 令和06年 (情報処理技術者試験)
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ニュースペックテキスト 応用情報技術者
すでに別の参考書で学習をしたり、あるいは過去に科目Aで落ちてしまったという方には、あえて「応用情報技術者試験」のテキストである『ニュースペックテキスト 応用情報技術者(TAC出版)』をおすすめします。
応用情報技術者試験は基本情報技術者試験の次のレベルにあたる資格ではあるものの、出題範囲は重なっている部分が非常に広いです。
また、応用情報のテキストということで、基本情報向けのテキストよりも少しだけ踏み込んだ内容になっている点がおすすめできます。(「80点を取りたいなら100点を目指せ」という考え方と同じです)
僕も合格した当時は、科目Aのインプットでこのテキストを使用しました。
応用情報のテキストなだけあり、基礎知識が確実に強化されていくのを実感しました。
また、適度な余白があったりオールカラー+図解もしっかりあるため、応用情報のテキストでありながらも読みやすい1冊になっています。
基本情報のテキストだけでは物足りない、もう少し強めに基礎固めをしておきたいという方におすすめです。
ニュースペックテキスト 応用情報技術者 2024年度 [シラバスver.6.3 対応](TAC出版)
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科目B対策
情報処理教科書 出るとこだけ!基本情報技術者[科目B]
参考書に価値があるのは、問題が載っているからではなく、問題の解説があるからです。
そのため、より良い参考書のひとつの基準に、「解説の充実度」が挙げられます。
今回ご紹介する『情報処理教科書 出るとこだけ!基本情報技術者[科目B]』は、基本情報の初学者でも読みやすい充実した解説が特徴的です。
解説が非常にわかりやすく、トレースのことがよく分からない初学者の方でも確実に力をつけていくことができます。
情報処理教科書 出るとこだけ!基本情報技術者[科目B]
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基本情報技術者 パーフェクトラーニング過去問題集
こちらの『基本情報技術者 パーフェクトラーニング過去問題集』は、科目Bに特化した書籍ではなく、科目Aの問題・解説も掲載しています。
しかしながら、「アルゴリズムとプログラミング」で欠かせないトレースの仕方や、「情報セキュリティ」の長文読解の読み解き方についても分かりやすく解説されています。
また、IPAのサンプル問題だけでは演習量が不安という方にもおすすめできる1冊です。
令和06年 基本情報技術者 パーフェクトラーニング過去問題集
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【おわりに】基本情報技術者試験の勉強で気をつけたこと
ここまで本当にお疲れ様でした!
長い記事であるにも関わらず、最後まで目を通していただきありがとうございます。
この記事では
- 基本情報技術者試験の概要
- 新制度「科目A」、「科目B」の概要
- 効果的な試験対策とおすすめの書籍
についてご紹介をしてきました。
最後に、僕が基本情報技術者試験の勉強をするときに気を付けていたことをお伝えして、当記事を締めくくらせていただこうと思います。
前述したものも含まれていますが、とても大切なことだと考えているため、再度記載させていただきます。
- 科目Aの勉強はできるだけ試験日との間隔を空けすぎない
- IPAのサンプル問題は過去問がない「科目B」において非常に貴重なので大切に解く
- 「情報セキュリティ」の強化をおろそかにしない
※練習には過去問道場(情報セキュリティマネジメント)がおすすめです。
基本情報技術者試験が「新制度」となったことで、プログラミング経験の有無が、試験の難易度を二極化させる状態になったなあというのが僕個人の感じていることです。
しかし、プログラミング未経験の方であっても、まずは「トレース」の仕方をしっかりと身につけ、練習問題を繰り返し解くことで必ず合格することができます。
最後までご覧いただき本当にありがとうございました。
当記事ではPHPやWordPress、Web制作に関する情報を発信しています。
ご興味のある方はそれらの記事もご覧いただけると嬉しいです!
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